2012年06月27日-3
消費税引上げ議論に働く「自壊する選択」を分析

 第一生命研究所のコラムの分析によると、消費税増税が嫌われる理由に、遠くに感じる財政再建のメリットよりも、身近な消費税増税の痛みを嫌がる心理がある。消費税を増税せずに、毎年、財政赤字を増やし続けていると、未来のどこかで財政危機がやってくる。そのダメージは、強制的な歳出削減や長期金利上昇、円安による輸入インフレという痛みである。財政再建は、現在の痛みと、将来の痛みの回避を交換しているとも理解できる。

 ところが、人々がせっかちになると、身近なほうの消費税増税の痛みが過度に嫌われて、増税プランが先送りされやすい。先々にあるイベントよりも、間近に見えるイベントが大きく見えるバイアスを「双曲割引」という。この作用は、現在と将来の評価をするときには、ビルを遠くから見るとき、近づくにつれて視線の角度が急勾配になる作用に例えるとわかりやすい。双曲割引とは、人々の心理が陥りやすい錯覚の一種なのである。

 この双曲割引によって人生が混乱しやすいのは、人々が借入をするとき。例えば、今日の消費を楽しむために20%の高利息で借金をするとして、この人はあらかじめ20%の高金利が適用されることを承知しながら、現在消費を優先する。結果的に、1ヵ月後には利子負担が膨らんで生活苦に陥って後悔する。双曲割引とは、将来の利益を捨てて現在の利益を優先しすぎたことで破滅に陥るという「自壊する選択」の罠なのである。

 そこで筆者は、「双曲割引」のバイアスが民主主義的な判断には働きやすいことを前提にして、対処法を提案している。双曲割引が働くとき、あらゆる負担増に反対論が叫ばれる。しかし、目先の負担増を先送りして、しっかりした対案が提出されているであろうか。その対案が説得力がなければ、単なる先送りが許されてしまう。禁欲的な人々は、増税反対論者たちが語っている代替案について評価すればよいことになる。

 また、消費税を3%引き上げるか否かについて、痛みが大きいのならば、1%の増税を2013 年10 月から始めるのも一案。オール・オア・ナッシングで決めようとするから痛みが強く意識される。伝統的保守主義の好ましさは、漸進的に物事を少しずつ進める中庸精神にある。消費税を+1%引き上げただけで、現在よりも自由度は高まる。消費税の痛みが大きければ、そこで消費税を下げればよい。柔軟な対応は、先送りを防止する、と言う。

 コラムの全文は↓
 http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/kuma_index.html

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