2012年06月21日-3
公認会計士協会に「組織内会計士協議会」発足へ

 日本公認会計士協会は7月の総会で常設委員会として「組織内会計士協議会」を発足させ、民間企業や公的機関など監査法人以外への会計士の就職支援に乗り出す。監査法人に勤める会計士が企業などで働く「組織内会計士」と情報交換するための組織で、転職を後押しする。従来は監査法人や会計事務所以外に属する会計士の動向に注意を払ってこなかったが、役割を拡大、協議会議長には民間企業から会計士を招く。

 会計業界が会計士の活動範囲拡大に動き出す背景には、監査法人の経営悪化と会計士試験合格者の就職難という問題がある。2006年からの新会計士試験で、試験合格者数は一時3000人超まで膨れ上がった。2010年以降、新日本監査法人と監査法人トーマツがそれぞれ400人規模の人員削減に踏み切り、最近ではあずさ監査法人も希望退職を実施した。試験合格者の「就職浪人」も1000人規模に膨れ上がっている。

 企業は会計士の採用を増やしてはいるものの、現在では試験合格者から中堅以上の会計士まで、全般的に供給過剰感が根強い。このため会計士協会は、試験合格者が直接企業などに就職する道を推奨するより、監査法人に在籍する会計士の転職や流動化を図りたいというのが本音のようだ。一方で、会計専門家の活用を進めるには、監査法人を経ないで組織内会計士となる選択肢も積極的に認めるべきだという意見もあった。

 採用する企業側のニーズと、会計士の意識とのズレはまだある。会計士協会が昨年、上場企業の財務担当者などを対象に実施したアンケート調査では、社内に会計専門家が必要との回答は全体の2割強。会計士は企画・IR(投資家向け広報)や財務などの業務に関心を持っているが、企業は大半が決算業務やIFRS(国際会計基準)対応を期待する。職種や報酬面でのかい離がある。「組織内会計士」の先行きにも困難が待ち構えている。

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