財務省は15日、日本国政府とアメリカ合衆国政府は、2004年に発効した「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」を改正する議定書案について、基本合意したと発表した。この議定書案は現行条約の一部を改正するもので、両国間の投資・経済交流を一層促進し、また、国際的な脱税及び租税回避行為をより適切に防止する観点から改正されるもの。
具体的には、利子等の投資所得に対する源泉地国課税を更に軽減するとともに、相互協議の強化及び行政支援の改善による両国の税務当局間の協力関係の強化が図られている。議定書案は、今後、両国政府内における必要な手続きを経た上で署名が行われ、その内容が確定することとなる。その後、両国における承認手続き(我が国の場合は、国会の承認を得ることが必要)を経た上で、発効する。
日米租税条約の沿革をみると、日本が初めて所得税条約を締結したのは、第二次世界大戦後のサンフランシスコ講和条約により独立を回復した後、1954年にアメリカ合衆国との間の所得税条約だった(原条約:1955年発効)。その後、第1次全面改正条約が1972年に発効され、第2次全面改正条約(現行条約)が2004年に発効し、現在の日米租税条約が形成された。
現行条約においては、OECDモデル条約をその基礎としているといわれているが、必ずしもその内容はモデル条約と同一ではなく、OECDモデル租税条約を基礎としていると理解するのは困難である。さらに、両国で扱いの異なる事業体の条約上の位置づけに関する規定や条約特典制限条項のように他の条約にあまり類を見ないような画期的な内容も盛り込まれている。
その内容は、相互に投資所得(利子、配当、使用料など)に対する減免を行った。特に、ライセンスなどの使用料所得は旧条約では10%とされていた制限税率を相互に免税(源泉地国では免税)としたことは画期的であり、今後両国間での投資促進への寄与が期待されていた。また、現行条約は他の租税条約例よりも有利な恩典内容となっていることから、悪用に対処すべく恩典を享受できるものについて詳細な規定が盛り込まれている。