2012年05月21日-3
消費税の逆進性は大問題?~ニッセイ基礎研レポート

 消費税率引上げを中心とする社会保障・税一体改革の関連7法案を審議する特別委員会が16日からスタートし、与野党の攻防がいよいよ国会の場で始まった。消費税率の引上げでは、逆進性の問題が焦点の一つとなっているが、ニッセイ基礎研究所は15日付けの「エコノミストの眼」で「消費税の逆進性は大問題か?」とのタイトルで、逆進性問題を取り上げている。

 所得税は収入が多いほど高い税率が適用され、高所得者ほど所得に対する税の割合が高くなる。ところが、高所得者ほど可処分所得に占める消費支出の割合は低いので、消費支出に課税すると、可処分所得に対する税の割合は所得が上昇するほど低下することになってしまう。このため、消費税は豊かな人ほど税率が低くなる逆進的なものだという批判があり、税率を上げていくと逆進性の問題を回避することが必要になるとされる。

 しかし、所得税も必ず貧しい人の方が豊かな人よりも税率が低いとは限らない。毎月の収入は少なくとも、実は大金持ちということはいくらでもある。生涯を通してみたときに、生涯所得が高い人の税率が必ず生涯所得が低い人よりも高くなっている訳でもない。消費税の逆進性緩和のために給付付税額控除が提言されているが、そもそも所得の補足に問題が多く不公平感が強かったことも、消費税導入の理由のひとつだったはず、という。

 消費税、所得税、年金や健康保険というように、個々の制度ごとに公平性を確保しようとしても、それぞれの制度が恐ろしく複雑なものになるだけで、結局公平なものにはならない。消費税の逆進性だけをことさらに取り上げてこれを問題視するのは、結局非常に複雑な制度を作りだすだけに終わる恐れが大きい。税や社会保障、財政の全体として制度が改善するかどうか、木よりも森を見て議論をすべきではないか、と指摘する。

 レポート(全文)は↓
 http://www.nli-research.co.jp/report/econo_eye/2012/nn120515.html

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