2012年03月14日-1
税理士は法律の専門家にはあらず~那覇地裁

 相続税の申告業務を依頼された税理士が、「相続財産の調査をすべき義務、さらには過大な相続税を納税するリスクに関する説明義務を怠った」として、約2500 万円の損害賠償を請求されていた事件の一審判決で那覇地裁は、「税理士は税の専門家であっても法律の専門家ではないから、所有権の移転原因を厳密に調査する義務があるとまではいえない」として、税理士の調査義務違反、説明義務違反を否定した。

 この裁判における争点は、(1)被告に注意義務違反が認められるか否か、(2)相当因果関係の存否、(3)本件損害額、の3点だったが、相続人である納税者(原告)は、(1)の注意義務について、この事件では、税理士が相続財産を調査すべき義務を怠り、過大な相続税を納税するリスクを説明すべき義務を怠った結果、「相続していない土地」まで相続税を納付する損害を被った、と主張して損害賠償を求めて提訴していた。

 一審判決は、関係証拠書類の作成等の経緯から、税理士が登記簿謄本及び固定資産評価証明書などの書類を調査していたことを認定。そのうえで、「税理士は税務の専門家であっても法律の専門家ではない」と判示した上で、「相続税の税務処理に際して、その土地の所有権の移転原因を厳密に調査する義務があるとまではいえない」と指摘、注意義務違反すなわち過失を認めることはできないとして相続人の損害賠償請求を棄却した。

 税理士が相続税の申告にあたって必要書類の調査、相続人からの聞き取り調査等を着実に行ったことに着目しての判決となったが、税理士業務が高度に専門化している時代にあって、税理士に対する高度注意義務や忠実義務への要求は今後ますます高まることが予想される。相続事案については、今後、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・不動産鑑定士など、各分野の専門家とのジョイントが必要になってくるとみられている。

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