2012年02月16日-2
消費税の水平的公平に改めてスポットを当てる

 ニッセイ基礎研究所の「研究員の眼」では、消費税の水平的公平性に改めてスポットを当てている。タイトルも「すきです消費税!」。筆者は、家族旅行で出かけた観光地の海鮮料理店の支払い時に、船盛りつきの豪華な食事をしていた隣席の顧客と出口のレジで一緒になる。お隣の方は大声で領収書を請求した。「宛名は上様で、日付は空けといてね!」。私用飲食費を必要経費に計上して事業所得の減少を図るために、領収書を請求した。

 「源泉徴収により所得を完全に捕捉されている給与所得者に比べて、必要経費支出の認められる人々の事業所得捕捉は困難であり、昔から、「クロヨン(9:6:4)」とか、「トウゴウサン(10:5:3)」と捕捉比率の格差が指摘されてきました。そして、ある支出が私用であるか必要経費であるかの正当な申告は、事業所得者の善意によってのみしか成しえないため、残念ながら、この言葉は今でも現役のままです」という。

 つまり、納税者番号等の導入があっても、所得が申告でなされる以上、この格差の抜本的解消は見込めず、所得税課税における水平的公平の確立は困難なまま。一方、消費税は完全に水平的公平が保たれている。同じ金額の消費なら、払う消費税も同額。さらに、500円ランチの消費税は25円だが、豪華な船盛り5000円を食べると250円も消費税を支払うわけで、贅沢をすればたくさん税金を支払うのは、垂直的公平にもかなっている。

 貯蓄の余裕のない低所得者は、所得のほとんどが消費に充てられ、消費税負担がより過酷であるという意見があるが、2010年家計調査の年間収入五分位階級別家計収支結果(勤労者世帯)をみても、年収849万円以上の最上位世帯は、年収354万円未満の最下位世帯に比べて、平均可処分所得は3.08倍だが、平均消費支出も2.59倍に増加していて、所得の増加の大部分は消費に支出されていることが分かると指摘する。

 さらに、「お金はただの紙なので、最終的には商品やサービスの購入に使われる。貯蓄は消費の繰り延べに過ぎず、誰でも最終的には等しく消費税課税される。垂直的公平に最も適しているはずの所得税が、現実には徴収場面で水平的公平が保たれていないままであるなら、完全な水平的公平の保たれている消費税で徴収し、税の分配場面で垂直的公平を実現できうる施策を実施すればよいのではないか」というのが筆者の主張である。

 レポート(全文)は↓
 http://www.nli-research.co.jp/report/researchers_eye/2011/eye120214.html

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