2012年02月15日-1
賃貸アパートの太陽光発電の余剰電力は不動産所得

 福島第一原発事故以降、太陽光のエネルギーを直接的に電力に変換する発電方式の太陽光発電が改めて注目されている。さて、不動産賃貸業を営む個人が、賃貸アパートの屋上に太陽光発電設備を設置し、これにより発電した電力をその賃貸アパートの共用部分で使用し、その余剰電力をいわゆる太陽光発電による余剰電力買取制度に基づき電力会社に売却している。この余剰電力の売却収入の所得区分はどのように取り扱われるだろうか。

 これは、国税庁の質疑応答事例に最近掲載されたものの一つだが、上記の太陽光発電設備による余剰電力の売却収入は、不動産所得に係る収入金額に算入する、と回答している。給与所得者が自宅に太陽光発電設備を設置し、その余剰電力による売却収入を得ている場合、その所得区分は一般に雑所得と解され、また、事業所得者が事業所に当該設備を設置し売却収入を得ている場合、その所得区分は一般に事業所得と解される。

 ところで、賃貸アパートの共用部分で使用する電気料金は、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるものである。一方、上記の太陽光発電設備により発電された電力は、賃貸アパートの共用部分に使用されるため、太陽光発電設備を設置することにより共用部分の電気料金は減少し、その分不動産所得の金額の計算上必要経費に算入される金額も減少することになる。

 この質疑応答事例では、このように、太陽光発電設備による発電が不動産所得の金額について増減させるものであることを踏まえると、その余剰電力の売却収入も不動産所得に係る収入金額に算入し、その所得金額を計算するのが相当との解釈を示している。

 なお、エネルギー需給構造改革推進設備を取得した場合の特別償却や所得税額の特別控除、エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却や所得税額の特別控除は、事業所得の金額や事業所得の金額に係る所得税額の計算における特例なので、不動産所得を生ずべき資産である賃貸アパートに太陽光発電設備を設置し、その業務(事業)の用に供している場合には、これらの特例の適用を受けることはできない、と注意している。

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