2012年01月25日-1
控除できる保険料の最高裁判決でレポート

 2012年1月13日及び16日に法人契約養老保険の個人所得税課税に関する最高裁判決が示された。収入を得るために支出した金額は一時所得の所得者本人が負担した金額に限られ、それ以外の者つまり法人が負担した保険料は含まれないと判断、国側勝訴とする逆転判決を下したものだが、ニッセイ基礎研究所の「研究者の眼」では、両判決について相当の判決であるとレポートしている。

 判決では、法人が保険契約者となり、死亡保険金受取人を法人、満期保険金受取人を役員とする養老保険契約に関し、支払保険料の2分の1を役員報酬として損金処理し、2分の1を保険料として損金処理したケースについて、役員の満期保険金受取に当たっての必要経費は、支払保険料全額ではなく、個人が負担したものと考えられる支払保険料の2分の1相当分である旨判示した。

 法人税基本通達には、法人契約養老保険について、養老保険に係る保険料(9-3-4)として、(1)死亡保険金及び満期保険金(通達では生存保険金)の受取人が法人である場合は、支払保険料は資産計上、(2)死亡保険金及び満期保険金の受取人が被保険者または被保険者の遺族である場合は、支払保険料は被保険者である役員または使用人の給与、と規定している。

 そして、(3)死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、満期保険金の受取人が法人の場合は、支払保険料の2分の1相当額は(1)により資産計上し、2分の1相当額は損金に算入する(ただし、役員または特定の使用人のみを被保険者としている場合には、2分の1相当額は被保険者である役員または使用人の給与とする)、と定められているが、最高裁判決のケースでの受取人形態((3)の受取人形態の逆パターン)についての定めはない。

 「コンメンタール法人税法」には、養老保険の支払保険料のうち2分の1を満期保険金支払のための積立保険料、2分の1を死亡保険金支払のための危険保険料と捉え、法人が受取人である満期保険金部分を資産計上、被保険者の遺族が受取人である死亡保険金部分を定期保険の保険料の取扱いに準じて損金算入(役員または特定の使用人のみを被保険者とする場合は、特定の者への経済的利益の供与として給与)と説明されている。

 両最高裁判決とも、個人の所得税計算については、「一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう『その収入を得るために支出した金額』に該当するためには、それが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえる場合でなければならないと解するのが相当である」として、必要経費は支払保険料全額ではなく、個人が負担したものと考えられる支払保険料の2分の1相当分であると結論づけた妥当な判決といえるとした。

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