2012年01月19日-1
消費税率引上げ先行、社会保障効率化は道半ば

 1月6日に社会保障・税一体改革素案が閣議報告された。これは、昨年7月に閣議報告された社会保障・税一体改革成案をより具体化させたものである。今後、この素案は与野党協議後、大綱に格上げされ、今年度中に関連法案の提出を目指すが、第一生命経済研究所の「マクロ経済分析レポート」では、同素案が閣議決定ではなく、「閣議報告」にとどまったことに対し、改革の推進力欠くことになったと指摘している。

 改革の柱の一つである社会保障改革をみると、給付を先行させている傾向が強いと指摘。機能維持・拡充は改革の一つの目標であるものの、同時に効率化・重点化を行わなければならない。消費税率5%引上げのうち1%相当が機能強化に用いられる予定で、充実3.8兆円に対して効率化・重点化▲1.2兆円からなり、効率化・重点化が不十分であれば消費税率1%相当の財源ではまかないきれない可能性もある、としている。

 また、税制改正では、消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%まで引き上げる。その他の所得税、相続税、贈与税などについては、2009年度税制改正法附則第104条や2011年度税制改正大綱でのやり残した宿題に取り組むことになった。負担減も一部あるものの、増税基調が強い。法人税は今後の更なる引下げを、地方税制は地方消費税の充実とともに地方法人課税のあり方を検討するなど曖昧な表現にとどまっている。

 素案でも示されているように、今回の改革は財政健全化に向けた「第一歩」にすぎない。今後の改革を進めるために、さらなる税制改正の実施を附則で明記する方針。また、消費税率引上げの前提となる経済状況については、具体的な経済指標の数値の提示を回避した。消費税率引上げ時期が2015年10月に後ずれするため、2015年度までに基礎的財政収支の赤字半減という目標の達成は厳しくなっているとしている。

 レポートの全文は↓
 http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/rashinban_index.html

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