2012年01月05日-1
国外財産5千万円超の個人は調書の提出を義務付け

 国外財産に係る所得や相続財産の申告漏れが近年増加傾向にあることを踏まえ、2012年度税制改正において、一定額を超える国外財産を保有する個人に対し、その保有国外財産に係る調書の提出を求める制度が創設される。その年の12月31日に合計額が5千万円を超える海外資産を持つ個人は、その財産の種類や数量、価額その他必要な事項を記載した調書を、翌年3月31日までに、税務署長に提出することが義務付けられる。

 財産の評価については、原則として「時価」とするが、「見積価額」とすることもできる。また、国外財産調書に記載した国外財産については、所得税法の規定にかかわらず、財産債務明細書への内容の記載を不要とする。この国外財産調書を年に1回税務署に提出してもらうことによって、税務署が海外での預金利子や株式への配当などを正確に把握して、国内での適正な課税や徴収に生かすのが目的だ。

 国外財産調書の提出の義務化に伴い、罰則規定・特例を設ける。国外財産に係る所得税や相続税の申告漏れや無申告があった場合に、提出された国外財産調書にその申告漏れ等に係る国外財産の記載があるときは、その記載がある部分につき課する過少申告加算税(10%、15%)や無申告加算税(15%、20%)については、通常課される加算税額からその申告漏れ等に係る所得税・相続税の5%相当額を控除した金額とする。

 この特例は、(1)国外財産から生じる利子・配当、(2)国外財産の貸付け・譲渡による所得、(3)その他国外財産に起因して生じた所得について、申告漏れがある場合に、その年分の国外財産調書に、その申告漏れ等となった所得に係る国外財産の記載があるときに適用される。相続税の場合は、被相続人が提出した相続の前年分または相続人が提出した相続の年分の国外財産調書に、その申告漏れ等に係る国外財産の記載があるときに適用となる。

 一方で、その所得に係る所得税について申告漏れ等があった場合に、その年分の国外財産調書の提出がないときや、提出された国外財産調書にその申告漏れ等に係る国外財産の記載がないときは、その提出または記載がない部分につき課する過少申告加算税(10%、15%)や無申告加算税(15%、20%)については、通常課される加算税額にその申告漏れ等に係る所得税の5%相当額を加算した金額とする。

 そのほか、国外財産調書の不提出・虚偽記載に対する罰則を設け、法定刑は1年以下の懲役または50万円以下の罰金とし、併せて、情状免除規定を創設する。これらの改正は、2014年1月1日以後に提出すべき国外財産調書について適用する(罰則規定は2015年1月1日以後に提出すべき国外財産調書から)。

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