2011年12月22日-1
給与所得控除の上限設定と退職所得課税の見直し

 2012年度税制改正大綱には、2011年度税制改正で積み残しとなっていた給与所得控除の上限設定と退職所得控除の見直しが盛り込まれた。現在の給与所得控除は、給与収入に応じて逓増的に控除が増加していく仕組みであり、上限はない。しかし、給与所得者の経費が収入に応じて必ずしも増加するとは考えられないことなどから、給与所得が1500万円を超える場合の給与所得控除額については、245万円の上限を設ける。

 給与所得控除は、「勤務費用の概算控除」と「他の所得との負担調整のための特別控除」の二つの性格があるものとされている。しかし、就業者に占める給与所得者の割合が約9割となっている現状では、「他の所得との負担調整」を認める必要性は薄れており、また、給与所得者の必要経費ではないかと指摘される支出は給与収入の約6%との試算もあり、主要国との比較でも全体的に高い水準となっていることなどが、見直しの背景にある。

 給与所得控除に上限を設けることに併せて、特定支出控除の特定支出の範囲を拡大する。具体的には、特定支出の範囲に、(1)職務の遂行に直接必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費、(2)職務と関連のある図書費、職場で着用する衣服費、職場に通常必要な交際費(勤務必要経費)を追加する。また、特定支出控除の適用判定の基準の見直し(給与所得控除の2分の1部分と比較)を行う。

退職所得課税については、勤続年数5年以下の法人役員(法人役員に相当する公務員・議員を含む)に係る退職所得の課税方法について、退職所得控除額を控除した残額の2分の1とする措置を廃止する。この背景には、2分の1課税を前提に、短期間のみ在職することが当初から予定されている法人役員等が、給与の受取りを繰り延べて高額な退職金を受け取ることで、税負担を免れるといった事例が指摘されていたことがある。

所得税における給与所得控除の見直しや退職所得課税の見直しは、個人住民税にも反映されることとなる。なお、給与所得控除及び特定支出控除の見直しは、2013年分以後の所得税及び2014年度分以後の個人住民税について適用される。また、退職所得課税の見直しについては、2013年分以後の所得税について、個人住民税は、2013年1月1日以後に支払われるべき退職手当等について、それぞれ適用される。

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