2011年11月30日-1
時効取得畦畔の課税資料収集で国税庁に改善要求

 会計検査院は24日、2010年度の「決算報告」を公表したが、財務省関係の報告で、個人が時効取得した田畑等の「あぜ」など(畦畔)について、22税務署管内の340人を会計実地検査した結果、333人が時効取得畦畔の時価相当額(時効取得畦畔の面積計3万8253.1平方メートル、国有財産台帳価格計22億2551万余円)を一時所得として適正に申告していなかった事実が判明、国税庁に是正を求めていたことがわかった。

 「あぜ」など(畦畔)のうち公図上地番の記載がなく、いずれの者にも属さないため国有財産とされた畦畔(国有畦畔)を、個人が取得時効を援用して所有権を取得しようとする場合、財務局長等に国有財産時効取得確認申請書を提出することとされている。財務局長等は、取得時効の完成を認定した場合は、申請者にその旨を通知し、その国有畦畔を国有財産台帳から除却するとともに、申請者への移転登記を行うこととされている。

 時効取得畦畔は、時効取得時の時価相当額が、労務その他の役務の対価又は資産の譲渡の対価としての性質を有しない一時所得として所得税の課税対象となる。国税庁は、官公署等に帳簿書類の提供等の協力を求められる所得税法の協力要請に基づき、時効取得畦畔に係る所有権移転登記の情報を課税資料として収集し、各税務署でその課税資料を活用して、時効取得者が所得税を適正に申告しているかについて申告審理を行う必要がある。

 同院では、国税庁で時効取得畦畔に係る課税に必要な資料が収集され、有効に活用されているかなどに着眼し、国有財産台帳価格で年間合計300万円以上の国有畦畔取得者482人のうち、22税務署管内の340人(面積4万153.4平方メートル、国有財産台帳価格計23億2599万余円)を対象に申告書等により会計実地検査を行った結果、333人(3万8253.1平方メートル㎡、22億2551万余円)は、一時所得として適正に申告していなかった。

 同院の指摘に基づき、国税庁は、時効取得者を的確に把握して課税を行うことなどができるよう、2011年6月及び7月に、個人課税部門の事務処理手続きを定めている個人課税事務提要を改正したり、国税局等に通知を発したりするなどして、申告審理に活用するため、財務省に所得税法に基づく協力要請を行い、時効取得者についての情報を課税資料として収集するなどの対処を行った。

 会計検査院の指摘事項は↓
 http://www.jbaudit.go.jp/report/new/all/pdf/fy22_05_09_09.pdf

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