2011年11月14日-1
見直しが迫られる社会保険診療報酬の特例

 8日の税制調査会(会長:安住純財務省)において、医業の「社会保険診療報酬の所得計算の特例」が取り上げられた。10月28日付けで会計検査院が「社会保険診療報酬の所得計算の特例に係る租税特別措置」について意見表示したことに基づき取り上げられた。意見では、「厚生労働省が2005年度以降要望書等を財務省に提出しておらず、財務省でも特例の検証が行われていない」と、経済実態に即した見直しを求めている。

 同特例は、1954年に議員立法により創設、社会保険診療報酬に係る所得の必要経費を一律収入金額の72%相当額としたことに始まる。1979年に一律の控除率を5段階概算経費率に改め、1988年に現行の社会保険診療報酬5000万円超を除外、2500万円以下の部分72%、2500万円超3000万円以下の部分70%、3000万円超4000万円以下の部分62%、4000万円超5000万円以下の部分57%とされ、現在に至っている。

 同院の検査によると、自由診療収入を含めた医業収入5000万円超の特例適用者が全体の約15%で、これらの者の自由診療収入平均は約1450万円(医業収入の約25%)。この中には自由診療収入を含めた医業収入が1億円を超える適用者も存在する。1億円を超える特例適用者の医業収入のうち、自由診療収入の平均額は約9000万円に及んでおり、特例の基準は、医業事業者の経営規模を測るための基準としては適切でないと指摘している。

 また、特例適用者のうち、実際経費の計算を行っている者が85.7%おり、これらの者はいずれも実際経費と概算経費を比較して概算経費が有利なため特例を適用していたことが分かった。この実態から、申告書等の作成事務上は、小規模医療機関の事務処理の負担を軽減するという特例の目的は達成されているとは認められない、とした。2012年度税制改正で同特例に「メス」が入るのか、注目されるところだ。

 会計検査院意見は↓
 http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2011/__icsFiles/afieldfile/2011/11/08/23zen15kai12.pdf

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