2011年11月11日-3
海外取引法人調査で286億円の不正所得を把握

 経済の国際化の進展により、企業等の国境を越えた事業、投資活動が活発化している。海外取引等のある法人の中には、海外の取引先との経費を水増しするなどの不正計算を行うものが見受けられる。このような悪質な海外取引法人等に対して、国税当局は、海外への資金移動に着目した資料情報の収集活用や租税条約に基づく情報交換制度の積極的な活用などにより、深度ある調査に取り組んでいる。

 国税庁のまとめによると、今年6月までの1年間(2010事務年度)における海外取引法人等に対する調査は、前年度に比べ5%増の1万3804件行われ、うち4件に1件(25.9%)の3578件(前年度比9.9%増)から海外取引等に係る申告漏れを見つけ、約2423億円(同69.8%減)の申告漏れ所得金額を把握した。うち622件(同8.6%増)は不正計算を行っており、不正所得金額は286億円(同5.9%増)にのぼる。

 調査事例では、電子メールから海外の法人を利用した不正蓄財が判明したものがある。A社は健康食品販売業を営んでいるが、調査の際、パソコン内の電子メールの履歴を確認したところ、代表者から経理担当者に、代表者の知人が経営する海外法人に対する架空の広告宣伝費計上を指示したメールを把握し、広告宣伝費を送金した海外子会社へ不正に蓄財した事実が判明したというものだ。

 一方、経済取引の国際化に伴い、非居住者や外国法人に対する支払(非居住者等所得)が増加傾向にあるなか、租税条約による源泉徴収の免除の特典が受けられない者であるにもかかわらず、偽って免除を受けるための届出書を提出し、源泉徴収を免れる事例が見受けられる。そこで、国税当局は、海外取引法人等に対する調査とともに、非居住者等所得についても、重点的かつ深度ある調査を実施している。

 2010事務年度の調査では、使用料や不動産等の賃貸料などについて国際源泉所得税の課税漏れを1348件(前年度比8.4%減)把握し、38億7400万円(同6.4%減)を追徴課税している。国際源泉所得税の非違の内訳(追徴税額2000万円以上)は、「使用料」に係るものが45%を占めて最も多く、次いで「不動産等の賃貸料」が19%、「給与等」18%、「その他」10%、「人的役務提供事業」5%、「不動産譲渡」3%となっている。

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