2011年11月02日-4
海外取引調査で1件平均1543万円の申告漏れ把握

 経済社会の国際化に伴い、国際的な課税問題は企業のみならず個人の富裕層にも広がりを見せている。国税庁は、今年6月までの1年間(2010事務年度)に海外取引を行っている者を対象に前年度とほぼ同数の3727件の実地調査を実施し、8.5%減の総額約575億円、8.5%減の1件平均1543万円の申告漏れ所得を把握した。この金額は、実地調査(特別・一般調査)全体での1件平均879万円の約1.8倍にのぼる。

 海外取引調査3727件を取引区分別にみると、「海外投資」(預貯金等の蓄財を含む海外の不動産や証券などに対する投資)が全体の39%を占める1446件、「輸出入」(事業での売上や原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引)が同14%の524件、「役務提供」(工事請負やプログラム設計など海外において行う、労力・技術等の第三者に対するサービスの提供)が同10%の365件となっている。

 そのほか、海外で支払いを受ける給与や贈与(親族に対する海外送金等)など海外取引に係るもので上記の取引に該当しない「その他」が全体の37%を占める1392件だった。これらの海外取引調査の結果、1件あたりの申告漏れ所得が1543万円見つかったわけだが、取引区分別では、「海外投資」で1641万円、「輸出入」で878万円、「役務提供」で1719万円、「その他」で1647万円が、それぞれ把握された。

 調査事例をみると、会社役員であるAは、外国人経営者への海運業等の経営ノウハウ伝授の見返りとして受け取った謝礼を海外の金融機関に留保・運用委託し、多額の運用益を得ていたが、その運用益6600万円を申告から除外していた。また、運用益を税務当局に把握されないよう、国外送金等調書の提出基準以下の金額に分割して国内に送金していた。Aに対しては3300万円の税額が追徴されている。

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