2011年10月26日-3
譲渡所得調査では1720億円の申告漏れを把握

 税務調査は年々、高額・悪質なものを選定して重点的に行われているのは周知のとおり。譲渡所得調査も、不動産等の売買情報など、あらゆる機会を利用して収集した各種資料情報を活用して、高額・悪質と見込まれるものを優先して行われる。国税庁のまとめによると、今年6月までの1年間(2010事務年度)の譲渡所得調査は4万2547件に対して行われ、うち62.8%にあたる2万6739件から1720億円の申告漏れを把握した。

 前年度に比べると、調査件数は20.5%、申告漏れ件数も20.3%し、申告漏れ所得金額は30.8%とそれぞれ減少となった。申告漏れ割合は前年度(62.6%)からほぼ横ばいだが、調査した約3件に2件から申告漏れを見つけたことになる。調査1件あたりの申告漏れ額は404万円(前年度464万円)となるが、この額は、同事務年度の所得税調査における調査等で把握された1件あたり平均の申告漏れ額138万円を大きく上回る。

 調査の内訳をみると、株式等譲渡所得については、前年度比25.4%減の1万261件の調査を実施。うち58.7%にあたる6026件(前年度比27.8%減)から総額276億円(同41.8%減)の申告漏れ所得を把握した。また、土地建物等については、前年度比18.8%減の3万2286件の調査を実施し、うち64.2%にあたる2万713件(同17.8%減)から総額1444億円(同28.1%減)の申告漏れ所得を把握している。

 事例をみると、国内居住者の会社員Aは、国外送金等調書により、海外から多額の受金があることが判明したが、確定申告がないことから、その内容の確認調査を行った結果、Aは、海外に居住していた親族が死去した際、相続した中古マンションを譲渡して多額の譲渡益を得ていたのに申告していなかった事実が判明した。Aは、国内財産も相続しており、この無申告分も含め計2200万円の申告漏れに対し税額400万円が追徴された。

ウィンドウを閉じる