2011年10月24日-2
約14%の実地調査で申告漏れ所得の6割強を把握

 近年の所得税調査の特徴は、高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査(特別調査・一般調査)を重点的・集中的に行い、一方で実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による“簡易な接触”で済ます調査方針にある。2010事務年度の調査でも、調査件数では約14%の実地調査で、申告漏れ所得金額全体の6割強(62.6%)を把握しており、近年は実地調査を中心とした効率的な所得税調査が続いている。

 国税庁がまとめた2010事務年度の個人事業者に対する所得税調査状況によると、今年6月までの1年間の所得税調査は、東日本大震災の被災者に対する税務相談への対応等に事務量を割いたことから前年度に比べ0.6%減の69万4千件にとどまったが、うち65.7%に当たる45万6千件から同2.9%減の9601億円の申告漏れ所得を見つけた。追徴税額は同6.8%減の1239億円。1件あたり平均138万円の申告漏れに対し18万円を追徴した。

 実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前年度比9.5%減の5万7千件だったが、うち86.0%にあたる4万9千件から同8.3%減の総額5036億円の申告漏れ所得を見つけ、同10.6%減の929億円を追徴。件数では全体の8.2%に過ぎないが、申告漏れ所得金額全体の5割強を占めた。調査1件あたりの申告漏れは879万円と、全体の平均138万円を大きく上回る。

 また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、調査件数全体の5.3%の3万7千件行われ、うち73.0%の2万7千件から977億円の申告漏れを見つけ、66億円を追徴した。1件あたり平均申告漏れは261万円。一方、簡易な接触は、59万9千件行われ、うち63.4%の38万件から3588億円の申告漏れを見つけ245億円を追徴。1件あたりの平均申告漏れは60万円だった。

 このように、実地調査では、全体の約14%の調査件数で申告漏れ所得全体の6割強を把握しており、高額・悪質な事案を優先して深度ある調査を的確に実施する一方、短期間で申告漏れ所得等の把握を行う効率的・効果的な所得税調査が実施されている。なお、業種別1件あたりの申告漏れ所得高額業種は、「風俗業」(2076万円)がトップ、「廃棄物処理」(1625万円)、「プログラマー」(1492万円)までがワースト3。

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