2011年10月17日-1
注目が集まる厚労省の「老年者控除復活要望」

 厚生労働省が公表した2012年度税制改正要望には、「高齢者の生活の安定を図る見地から、老年者控除の復活をはじめ、年金受給者の税負担のあり方について検討を行う」ことが盛り込まれている。同控除は、65歳以上で合計所得が1000万円以下の者に対して50万円の所得控除が認められる制度で、2005年に廃止された。ニッセイ基礎研究所のレポートでは、この「老年者控除の復活」の可能性に言及している。

 現在、老年者控除の復活や公的年金等控除の再拡大をマニフェストに盛り込んだ民主党が政権の座に就いているが、これまでのところ具体的な議論はなかった。また、今年6月にまとめられた「社会保障・税一体改革成案」には、社会保障財源の重点化・効率化の一案として公的年金等控除の縮減が盛り込まれており、マニフェストの中身が見直されつつある印象を受けた。そのなかで今回の要望が出され、レポート筆者は大変驚いたという。

 民主党がマニフェストに老年者控除の復活や公的年金等控除の再拡大を盛り込んだ背景には、子ども手当の財源捻出のための配偶者控除の見直しが、子ども手当と無関係な高齢者世帯にも影響することへの代償という位置づけもあった。今回の要望にも配偶者控除の見直しが含まれているため、老年者控除の復活も併記されたのだろうが、「一体改革成案との整合性はどうなっているのか?」という印象を受ける、としている。

 高齢者や年金受給をめぐる税制には、70歳以上には配偶者控除が上乗せされることや遺族年金の非課税、働きながら年金を受け取った場合に給与所得控除と公的年金等控除の両方を受けられるという優遇もあると指摘。政府や与党の税制調査会で、今回の要望や他の優遇点がどのように議論されていくのか、また低所得者への加算やマクロ経済スライドの見直しなどの一体改革成案とどう整合性が取られていくのか、注目したいとしている。

 レポートの全文は↓
 http://www.nli-research.co.jp/report/researchers_eye/2011/eye111005-2.html

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