2011年09月15日-2
民法特例「固定合意」は制度発足後いまだ適用「0」

 中小企業庁がまとめた経営承継円滑化法の今年7月までの制度の申請状況によると、7月末の民法特例の適用者は35件(除外合意35件、固定合意0件)、事業承継税制の事前確認が2160件、贈与認定96件、相続認定299件だった。経営承継円滑化法は、その制度を上手に使えば円滑な事業承継に役立つ制度だが、件数が伸びていないのが現状。 その背景には制度が複雑で分かりにくいことがネックになっている。

 民法特例には「除外合意」と「固定合意」の2制度がある。「除外合意」は、遺留分権者の全員が合意した場合にかぎり生前贈与した自社株等を遺留分の対象から除外する。「固定合意」は、後継者への自社株贈与後に業績を向上させた場合に、相続発生時に後継者以外の相続人の相続分が増えることとなり後継者の経営意欲を削ぐとの懸念があることから、あらかじめ株価上昇分を相続分に反映させないように贈与時の価額に固定するもの。

 「除外合意」に関しては、遺留分権者の「全員の合意」が大きなハードルになっていると考えられる。除外合意するためには自社株等を後継者に贈与することを全員に周知したうえで、それを将来の遺留分から除外することの合意を取り付ける必要があり、いわば遺産分割協議の一部先取りとも言える話し合いをしなければならない。このため、制度に対する関心はあっても実際に申請には至らない。

 一方、「固定合意」は、将来の株価が下落した場合に、かえって後継者にとって法定相続分や遺留分の算定上不利になることが明らかであるため、現在の厳しい経済情勢を考慮すると、今後の中小企業の株価は下がる可能性が高いため、固定合意の申請がまったくない状況にあると推定される。適切に活用できれば円滑かつ安定的に自社株等を後継者に承継させることができる民法特例だが、今後さらなる制度改革が望まれる。

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