2011年09月14日-2
住民監査請求前置の存廃をめぐり議論

 内閣府・行政救済制度検討チームは、行政のあらゆる分野で国民の権利救済を進展させるべく検討を行っているが、住民監査請求制度についてもメスを入れている。というのも、住民監査請求制度は、地方自治体の不正行為に対し、住民が直接訴訟に持ち込む前の、いわば前置制度であるため。救済検討チームでは、国民がすべからく直接訴訟へ持ち込めるよう不服申立前置制度の撤廃を目指しているが、その成果が注目されている。

 住民監査制度は、監査員が地方自治体の内部で行政全般を監視し、行政運営の公正妥当を期すために、長から独立して特に設けられた機関と位置付けられている。監査委員には、監査のために広範かつ強力な権限が認められ、住民監査請求は、監査員による自治体内部における監査の端緒となるものとして地方自治制度上位置付けられている。委員は、人格が高潔で行政運営に優れた識見を有する者及び議員から、議会の同意を得て選任される。

 また、識見委員として弁護士、公認会計士等のほか会計管理者等の地方自治体の職員経験者等が選任されている。識見委員の構成を見ると、都道府県では弁護士・公認会計士等34.9%、民間出身者29.2%、当該県の職員経験者21.7%。市では弁護士・公認会計士等38.3%、民間出身者56.9%、当該市の職員経験者27.0%。町村では公認会計士・税理士6.9%、民間出身者51.0%、当該町村の職員経験者24.4%となっている。

 総務省がまとめた2007年4月~2009年3月の住民監査請求・住民訴訟の概況によると、監査請求の総数は1798件(都道府県338件、市町村1460件)で、その結果は「取下げ」37件、「却下」733件、「棄却」923件、「勧告を行ったもの」91件、「合議不調」14件。住民訴訟は、同期間中に提起されたのが431件(都道府県96件、市町村431件)で、「却下」47件、「棄却86件、「原告一部勝訴」4件、原告全部勝訴」4件、「係争中」308件となっている。

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