2011年09月12日-2
不服申立前置にあくまで固執する財務省

 政府の行政救済制度検討チームのワーキンググループは、7月28日から5回にわたり「不服申立前置の全面的見直し」をテーマに、33法律を俎上に乗せて各府省からのヒアリングを実施した。7日のヒアリングの最終日には、財務省・国税庁・国税不服審判所がヒアリングに出席、国税通則法に規定のある税務署への「異議申立て」、国税不服審判所への「審査請求」という二重前置制度について、あくまで「存置すべき」と主張した。

 国税に関する不服申立制度は、処分(更正・決定等)を受けた納税者が、その処分に不服がある場合、2ヵ月以内に原処分庁(税務署長等)へ「異議申立て」を行い、「異議決定」になお不服がある場合には、1ヵ月以内に国税不服審判所に「審査請求」を行い、「裁決」を経て、なお不服の場合に「訴訟」(6ヵ月以内)へ進むというプロセスをたどる二重前置制度となっている。行政救済検討チームは、直接訴訟への道を拓こうと検討しているもの。

 財務・国税側は、「国税に関する不服申立てが大量に、毎年度反復して、しかも特定の時期に集中して行われるという性質、また、その不服の内容が要件事実の認定の当否に係るものが多いこと、さらに現実において、納税者の不服について簡易、迅速な救済を図るという異議申立の目的が現行制度によりかなりの程度において達せられているという事実にかえりみ、原則として維持することが適当」と主張した。

 また、主要国の国税の争訟手続で、訴訟手続に先立ち1段階ないし3段階の租税行政庁への不服申立ての場が設けられているとも主張。例えば米国の場合通常、処分の前後にIRS(内国歳入庁)との協議が行われ、租税裁判所に直接提訴した場合も、裁判所からIRSとの協議に回付されるなど、実質1段階前置であり、英国では、協議(現処分庁)、審査請求(対第一次行政審判所)、再審査請求(対上級行政審判所)の3段階前置を採っている。

 しかし、納税者の権利救済という視点からは、直接訴訟に持ち込むことを禁止する必要はないというのが検討チームの基本的考え方。行政サイドが前置制度存続を主張する背景には、国税不服審判所(定員165人)の人事上・予算上の既得権益の確保という側面がみえる。なお、2011年度税制改正大綱の検討事項では、「不服申立前置の仕組みのあり方について、内閣府・行政救済検討チームの結論を踏まえ所要の見直しを図る」とされている。

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