2011年09月05日-1
企業年金の税制支援は金持ち優遇ではない

 さる6月末、政府民主党による「税・社会保障に関する一体改革」の成案がまとまった。社会保障の機能強化のために2010 年代半ばを目処に消費税率を10%程度まで引き上げるとともに、年金については所得比例年金への完全一元化を目指すものの、当面は現行制度の改善策を検討・実施する。この点について、ニッセイ基礎研究所の「年金ストラテジー」で「企業年金の税制支援は金持ち優遇ではない」と題し、レポートしている。

 それによると、「税・社会保障に関する一体改革成案」で最初に掲げられているのが、低所得者層への所得保障機能の強化と高所得者への給付見直しである。国民年金の給付額は満額でも月額6万6000円でしかない上、保険料免除者や未納者の受給額はさらに低く、改善が望まれ、他方、高所得者層の年金額を国庫負担分程度減額できれば、財政の安定に寄与する、と提案している。

 財政状況の不確実性もあり、「今後、公的年金は所得再分配を通じた低所得者の防貧にその役割をより集中せざるを得ないだろう」という。その結果、高所得者層への給付が抑制されて所得代替率が低下するなら、それを補うために企業年金や個人年金への税制上の支援策を強化する必要がある。もちろん、これらの制度を活用できるのは主に高所得層であるため、ここだけみれば金持ち優遇にみえる。

 しかし、「高所得層が公的年金を通じた所得再分配により貢献するのなら、この策は決して悪くない。公平かどうかは年金制度や税制全体をみて判断すべきである」とレポートでは主張している。時あたかも、前財務相の野田佳彦首相が誕生した。財政再建派の野田首相が消費税率引上げにいつ踏み切るのか、流通業界が戦々恐々としているとの報道もあるなか、避けては通れない年金財政問題にどう取り組むのか、注目されるところだ。

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