2011年08月29日-2
効果は小さかった4月の寄附金控除の拡充

 4月に施行された震災特例法により寄附金控除が拡充されて、所得控除の限度額が40%から80%に引き上げられ、東日本大震災の被災者支援活動を行う認定NPO法人に対する寄付金についても税制上の優遇措置の適用を受けられるようになったが、今回のような大災害時には、寄附金控除の有無に関係なく寄附をした人が大多数であることが、関西社会経済研究所がまとめた調査結果で明らかになった。

 同研究所が全国20歳から79歳の男女を対象に実施した「東日本大震災に際しての寄附アンケート調査」結果(有効回答数998人)によると、寄附支出者のうち「寄附金控除が震災の寄附の要因になったと思う」との回答は19.1%に過ぎず、「思わない」が40.4%、さらに「制度を知らなかった」が40.5%と計8割を占め、寄附支出者の大多数が寄附金控除制度の有無にかかわらず寄附をしたことが分かった。

 さらに、1人当たり寄附支出別にみると、寄附支出が増加すると、「制度を知らなかった」との回答は減少し、「思わない」が増加。つまり、寄附金控除は認知されているにもかかわらず、高額寄附に影響していないことがうかがえる。同研究所では、「寄附金控除の拡充(上限引上げ等)が寄附行動に及ぼした効果は小さく、今回の事象からは不必要な政策だったと判断できる」とコメントしている。

 なお、震災から約3ヵ月間の1人当たりの寄附支出額は9443円だった。寄附金を階級別にみると、最も割合で高いのは「2千円以上5千円未満」の19.0%で、「1万円以上2万円未満」は12.9%、10万円以上は1.3%だった。世帯所得が1千万円以上になると、1人当たり寄附支出額が急増し、また、寄附は件数でみると1万円未満の小口が71.1%と圧倒的だが、寄附総額への貢献は大口が85%を占めている。

 ちなみに、総務省の家計調査では、大震災の発生後の3ヵ月間の寄附支出額は約4300円と同調査よりも低くなっているが、1995年の阪神淡路大震災での約3000円に比べると被害の大きさも違うこともあり、やはり高くなっている。

 同アンケート調査結果の詳細は↓
 http://www.kiser.or.jp/ja/project/pdf/hp_Pdf01_2.pdf

ウィンドウを閉じる