2011年08月25日-1
居住用家屋が複数ある場合の小規模宅地の特例

 仕事の都合で月~金曜は都内のマンションで過ごし、土日、祝日は郊外の一戸建てに居住していたサラリーマン夫婦。夫が亡くなり、これら居住用不動産を相続した妻が、相続税の申告に際し、マンション、一戸建て住宅の2ヵ所について小規模宅地の特例を適用できるのか。当然ながら、居住用宅地が2ヵ所以上ある場合は、主として居住の用に供されていた1ヵ所の宅地に適用される。その判断がつかない時も1ヵ所である。

 上記のケースの場合、どちらの住居を主とした居住に当たるのかを区別するのは難しいが、日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況、他に拠点になりうる家屋の有無その他の事情を総合勘案して判定する必要がある。特定居住用宅地等の適用を受けるためには、相続開始日以降に作成された住民票の写しや戸籍の附票の写しの添付が必要で、このことも含め総合的に判断することが必要となる。

 ところで、小規模宅地等の特例は、租税特別措置法第69条の4に規定され、これに伴い政令、省令、通達と細かい規定がある。居住用の宅地等もこのなかに定められているが、その規定のどこにも居住の用に供されている宅地等が「1ヵ所に限る」とか、「2ヵ所以上は認めない」などの規定はなかった。唯一、所得税法で居住用不動産の譲渡につき措置法第20条の3第2項で、主として居住している一の家屋に限るとの規定があった。

 小規模宅地等の適用が、こうした明文規定を持たないまま居住用の1ヵ所しか認めない取扱いをしているのは、小規模宅地の特例が創設された当時の趣旨からきたと思われる。2010年度税制改正で、2010年4月1日以降の相続開始から特定居住用宅地が2ヵ所以上ある場合は、「そのうちの主として居住用に供している1ヵ所に限る」と規定された。また、どちらが主たる住居か決めかねる場合、納税者の選択でいい(2009.2.4福岡高裁判決)。

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