2011年08月08日-3
消費税率引上げ案が抱える課題でレポート

 政府は「社会保障と税の一体改革」成案の中で、2010年代半ばまでに消費税率を10%まで引き上げることを決めた。消費税増税による社会保障の安定財源確保の道が開かれるが、「一体改革」成案の消費税増税は現在発生している財源不足を穴埋めするに過ぎない。2010年代半ば以降の消費税増税については言及されておらず、税率引上げのタイミングや消費税収の国と地方の配分など未決定の部分が多い、とみずほ総研がレポートしている。

 2010年代半ばまでに10%まで引き上げるとされた消費税案は、現在生じている財源不足を埋める措置に過ぎず、それ以降の税率引上げについては言及されていない。また、税率引上げのタイミングが具体的に示されておらず、実施が近づくにつれて国民の間で大きな反発が生じる恐れがあると指摘。「経済状況の好転」という文言が盛り込まれたことから、その基準次第では、消費税率引上げが延期されかねないとしている。

 次に、消費税収が国・地方分ともに社会保障財源とされる一方で、消費税収の国と地方の配分についてはまだ明確な基準が設けられていない。現在、消費税収は地方交付税(国の消費税(4%)の29.5%)と地方消費税(1%)として地方に配分され、消費税5%のううち2.18%(税収に占める割合は43.6%)は地方の取り分。「一体改革」成案では、これをそのままに5%引上げ分を国と地方が社会保障の役割に応じて分け合うことになった。

 こうした方針は妥当にも思えるが、実際に社会保障の役割を国と地方に明確に切り分けることは容易ではない。消費税収に関する国と地方の配分は今年秋以降に行われる来年度予算編成のなかで決められる予定だが、国と地方の意見の対立で議論が難航することが予想される。さらに、消費税率引上げを長期的な過大と捉えた場合の逆進性の問題は避けて通れず、具体的な提案が望まれるとしている。

 同レポートの全文は↓
 http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/research/r110801tax.pdf

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