2011年08月08日-1
滞納整理、訴訟提起終結の225件全てで国側勝訴

 国税庁が先日公表した2010年度租税滞納状況によると、新規発生滞納の抑制及び滞納整理の促進により、今年3月末時点の滞納残高は12年連続して減少、ピークの1998年度の約50%まで低下した。同庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となる訴訟を提起したり、滞納処分免脱罪による告発を活用して積極的に滞納整理に取り組んでいる。

 原告訴訟に関しては、2010年度は平成に入り過去最多となった2009年度の226件には及ばなかったものの、200件の訴訟を提起。訴訟の内訳は、「差押債権取立」25件、「供託金取立等」12件、「債権届出ほか」153件のほか、特に悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が10件と、この5年間でもっとも多い件数となった。そして、係属事件を含め終結した225件全てで国側が勝訴している。

 また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、滞納処分免脱罪の告発を行うなど、特に厳正に対処している。同罪の罰則は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、またはこれを併科とされている。2010年度は2事案(5人)を同罪で告発。例えば、大阪国税局管内の廃棄物収集運搬業の滞納法人A社が同罪で告発されている。

 A社は、法人税等の滞納約1億円により、国税局から財産を差し押さえる旨の予告を受けた。その直後、A社の実質経営者は、差押えを免れる目的で関連会社がA社の地位を取得したように仮装した上で、A社の売掛金を関連会社の預金口座に振り込ませるなどして、合計6800万円の売掛金を隠ぺいした。実質経営者は逮捕・起訴され、懲役1年6ヵ月、罰金50万円(執行猶予3年)が確定している。

 なお、上記の「名義変更訴訟」は、国税債権者である国が、国税債務者である滞納者に代わって、滞納者に帰属しながら滞納者の名義となっていない財産の名義を滞納者名義とすることを求めて提起するもの。また、「詐害行為取消訴訟」は、国が、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行う。

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