2011年08月01日-2
法人税パラドックスを真正面から分析

 財務省財務総合政策研究所はこのほど、研究論文「法人税における税収変動の要因分解~ 法人税パラドックスの考察を踏まえて~」を公表した。同研究所の大野太郎(尾道大学経済情報学部講師、 財務省財務総合政策研究所特別研究官)、布袋正樹(財務省財務総合政策研究所研究官)、佐藤栄一郎(財務省財務総合政策研究所客員研究員)、梅崎知恵(財務省財務総合政策研究所研究員)の各氏が共同研究したもの。

 近年、諸外国で法人税率の引下げにもかかわらず、法人税収対GDP比が増加する国がみられ、「法人税の税率・税収パラドックス」と呼ばれる。諸外国で法人税パラドックスが生じた背景としては、第1に税率の引下げとともに(投資控除の縮小等)課税ベースを拡大させた結果、実効税率の低下が抑制されたこと、第2に税率の引下げで事業者の「法人なり」を誘発した結果、法人部門の拡大が税収増加に寄与したことを指摘している。

 一方、日本は法人税パラドックスが確認されない一つのケースであり、特に1990年代は税率の低下とともに税収も大幅に減少した。この税収低下の主な要因は、実効税率の低下で、その背景には法定税率の引下げといった税制要因と、景気低迷に伴う企業の特別損失の計上及び繰越欠損金控除の増加といった景気要因の双方が寄与している。他方、日本においては法人税制改革に伴う「法人なり」について明確な動きは確認されないという。

 構成は、2節で法人税率が法人税収に及ぼす影響に関連した研究につき、実証分析による成果を中心に整理。3節で近年のOECD諸国の法人税率や税収の推移をみる。控除や実効税率の推移もみていき、法人税収増加の背景には課税ベースの拡大(控除の縮小)に伴う実効税率の低下抑制があった点を確認。4節で諸外国の法人税収増加の背景に触れ、5節で1980 年代以降の日本の法人税収変動の要因分析を行う。6節で結論を述べている。

 同論文は↓
 http://www.mof.go.jp/pri/research/discussion_paper/ron224.pdf

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