2011年07月21日-1
高額な社員旅行費用負担額の損金算入を否認~裁決

 周知のように、社員旅行を実施する場合の税務上の取扱いは、(1)旅行に要する期間が4泊5日(目的地が海外の場合は、目的地における滞在日数による)以内であること、(2)全従業員の50%以上の参加者があること、のいずれの要件も満たす場合には、原則として給与として課税しなくてもいいこととされているが、その金額が多額で社会通念上一般に行われていない場合には課税することになる。

 国税不服審判所はこのほど、土木建築工事業のA社が従業員1人あたり約24万円を全額負担して行った海外への社員旅行の費用の損金算入を否認した裁決事例を明らかにした。 請求人のA社は、従業員等を参加者として実施した社員旅行が、実施日程が2泊3日であること、従業員のほぼ全員が参加していることなどから、A社が負担した旅行費用は、従業員に対する経済的利益(給与)として課税されるべきではない旨主張した。

 しかし裁決では、社内旅行が基本通達にいう社会通念上一般的に行われていると認められるものに当たるか否かの判断にあたっては、少額の現物給与は強いて課税しない(少額不追求)という基本通達の趣旨からすれば、従業員の参加割合、参加従業員の費用負担額ないし両者の負担割合よりも、参加従業員の受ける経済的利益、すなわちレクリエーション行事における使用者の負担額が重視されるべきと指摘した。

 そこでA社が負担した従業員1人あたりの旅行費用約24万円は、海外への社員旅行を実施した企業の1人あたりの平均会社負担金額を大きく上回る多額なものであるから、少額不追求の観点から、強いて課税しないとして取り扱うべき根拠はないものといわざるを得ないとして、A社の旅行については、社会通念上一般的に行われているレクリエーション行事の範囲内と認めることはできないとの判断を示している。

 A社のケースは、上記の要件は満たしたものの、金額が多額であることから課税対象となったものだ。この金額については、法令・通達で明記されていないが、実務上は1人あたり総額25万円程度の社員旅行で、会社負担が10万円程度であれば給与課税される心配はないとみられている。社会通念上「金額が多額でない」との基準に明確な線引きはないが、とりあえず「10万円」を会社負担額の基準とするのが無難といえそうだ。

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