2011年06月09日-2
小規模宅地の特例では生前の事業承継に注意

 小規模宅地等の課税価格の計算の特例は、被相続人または生計一親族の事業の用に供されていた宅地について、事業継続要件、生計一要件を設けている。例えば、30数年にわたり製本業を営んでいた社長が、還暦を機に事業を長男に譲った。長男は、父親とは別に暮らしていたが、隠居を始めた父親が、事業承継に安心したのか急逝した。長男が製本工場の土地建物を相続し、引き続き事業を行っているようなケース。

 この場合、小規模宅地の特例は適用できない。相続税の小規模宅地は、相続の開始時点において、被相続人自身の事業の用または被相続人と生計を一にする親族の事業の用に供されていなければならない。このケースでは、事業者である長男が父親である被相続人と生計を一にしている、つまり同居していれば、この特例を受けることができた。それも、80%減額の特定事業用宅地の対象となる。

 また、生計は別でも、父親が事業を継続していれば、相続により引き継ぐことで、同じく80%の減額を受けることができた。つまり、一方で事業承継税制の活用により贈与税の納税猶予等の特例措置の適用を受けることができたはずだが、小規模宅地等の課税価格の計算の特例では、生前贈与があだとなったことになる。事業承継に関しては、普段から、顧問税理士等とのあらゆる角度からの緻密な計画の検討が必要と言えよう。

 なお、小規模宅地等の特例に関して言えば、2001年度税制改正で、2001年1月1日からの相続等については、特定事業用等宅地等について、その対象面積が330平方メートルまでから400平方メートルまでに拡大されている。しかし、上記のケースのように、生前の事業承継については改正の対象外になっている。相続においては、相続税の課税価格に占める土地のウェートが高いことから、十分な注意が必要だろう。

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