2011年06月02日-3
消費税増税は単一税率で段階的引上げを提唱

 社会保障改革に関する集中検討会議が5月30日に開かれ、田近栄治一橋大大学院教授が「消費税の税率構造のあり方及び消費税率の段階的引上げに係る実務上の論点について」との資料を提出した。今後の社会保障を支える税制のあり方を考えると、広く薄く全世代が負担し、税収が安定的な消費税の役割は益々重要であり、消費税を含む税制抜本改革の実現により安定財源を確保していくことが必要との認識を示した。

 資料では、現在、消費税(国分)を充当するとしている高齢者3経費に対し約10兆円の財源が不足し、将来世代に負担が先送りされている状況がある中、社会保障の安定・強化と財政健全化を同時に達成することが極めて重要で、社会保障と税の一体改革の議論を進める上で、消費税の逆進性(複数税率)や税率の段階的引上げの影響に係る実務面を始め具体的な論点について、あらかじめ一定の整理を行っておくことが有益とした。

 消費税率のあり方については、特に複数税率の設定について、(1)単一税率の場合と比べて税収減をもたらす、(2)事業者の事務負担や当局の執行コストを増加させる、(3)逆進性対策の観点からも、軽減税率の効果は高所得者にも及ぶことから効率的ではなく、低所得者向けの給付措置など、より有効な方策が考えられる、といった観点から、軽減税率の導入や非課税範囲の拡大よりは、課税ベースの広い単一税率が望ましいと整理している。

 また、今後の中長期的な社会保障の見通し等を見越して相当程度の消費税率の引上げが必要になることを考えれば、段階的に税率を引き上げていく必要があり、具体的な引上げのあり方については、マクロ経済に与える影響のみならず、税率の変更が値札の張替えやシステム変更など事業者の納税事務コストを増加させることから、引上げ回数が増えることが事業者の事務負担に与える影響にも留意しつつ、検討することが必要としている。

 同提出資料は↓
 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/syutyukento/dai9/siryou3-5.pdf

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