2011年05月25日-2
税と社会保障の一体改革の前に「使い方」の提示を

 5月12日の第6回社会保障制度改革に関する集中検討会議において厚生労働省案が示されるとともに、6月下旬までに「社会保障と税の一体改革案」をまとめ、2015年までに消費税率を10%とする方向で検討に入っているが、ニッセイ基礎研究条は17日、「『取り方』の説明ではなく、『使い方』の提示を~“税と社会保障の一体改革”の前に~」と題したレポートを掲載、「どう使うのか」の提示を求めている。

 レポートは、厚労省案がいつも通りの同省の考え方に、先の震災の記述が加えられたに止まり、「抽象的で具体性に欠ける」や「全体の方向性が見えない」と評価。また、消費税率が引き上げられると言われて久しく、その間に国政選挙の争点となり、また、国会審議の他、テレビ・雑誌等の報道でも幾度となく取り上げられてきたが、「引上げは何%が妥当か」、「社会保障目的税とすべきか」ではなく、「その先」を考えるべき、としている。

 これまで年金・医療・介護の3つの制度改革の議論では、少子高齢化を背景に将来の(または現在の)財源不足を消費税増税分で安定的な新財源とする議論が抽象的に展開されてきた。しかし、もっとも重要な「使い方」の素案すら示されないのは何故か。確に、消費税増税の国民的合意がない中で何兆円もの「使い方」を示すことに抵抗感はあるが、「使い(われ)方」が示されない中で国民が是非の判断することはもっと難しいという。

 今回示された「案」の医療・介護部分をみても、未だに枝葉の項目が並んでいる。給付の重点化や効率化、医療と介護の連携、予防重視等は確かに重要だが、「税との一体的改革」の前段として示される以上、新たな恒久財源が得られることを意識した踏み込んだ内容が必要で、せっかくの制度建直しのチャンス(財源確保)が「診療報酬・介護報酬を何%プラス改定する」ことで数年間を凌ぐだけになってしまいかねないと指摘している。

 同レポートの全文は↓
 http://www.nli-research.co.jp/report/researchers_eye/2011/eye110517.html

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