2011年05月23日-3
新たな減免措置のない小規模宅地の特例

 東日本大震災の発生に伴い、災害に関する相続税・贈与税について、納期限の延長措置等がとられているほか、震災特例法により「相続税等の課税価格の計算の基礎となった財産の価額(相続税については債務控除後の価額)のうちに被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上である場合」は相続税・贈与税が減免されるが、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」については新たな措置は講じられなかった。

 ただし、被相続人の事業の用に供されていた施設が災害で損害を受けたため相続税の申告期限において休業中でも、その施設を相続により取得した被相続人の親族が事業再開のために準備を進めているときは、その施設の敷地は、その申告期限においてもその相続人の事業の用に供されているものとして取り扱う。これにより、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の要件の1つが満たされる(国税庁FAQ)。

 したがって、事業の継続要件以外の他の要件を満たす場合には、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受けることができる。なお、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等の居住または事業の継続要件の判定においても、前記に準じた取扱いとなる。しかし、この取扱い(措置法第69条の4-3、措通69の4-17)は、今回設けられたものではなく、元々あった措置である。

 同措置は、「事業再開のために準備を進めているとき」を適用の前提としている。しかし、東日本大震災による被災の現状は、事業再開や居住用建物建築の見通しがまったく立たないほど悲惨な状況であることを考えると、「事業再開のために準備を進めているとき」という条件すらも排除する必要があるのでは、という専門家の意見が多い。そもそも、小規模宅地の特例自体が、「生計一」を前提としており、「時代に逆行している」との見方もある。

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