2011年05月18日-1
基礎年金を消費税で賄う税方式に~日経センター提言

 日本経済研究センターは17日、基礎年金の全財源を消費税などで賄う税方式に移行するなどの税制と社会保障制度を一体改革する提言をまとめ公表した。基礎年金を税方式化し、厚生年金、共済年金の報酬比例部分は民営化して年金保険料を廃止するとともに、法人実効税率を2021年度に向け10%引き下げ、約26%にする。一方で、消費税率は1%ずつ引き下げ、2027年度に向けて20%とすることを提案した。

 法人税率は2013年度から2021年度まで毎年1%ずつ引き下げ、実効税率を2011年度の約36%(税制改正後)から約26%にする。これによって、日本の主な投資先になりつつあるアジア諸国とほぼ同水準となる(2010年のアジア諸国の法人実効税率は、中国25%、NIES4約20%、ASEAN約27%)。一方で消費税率は、2013年度から2027年度まで毎年1%ずつ引き上げる結果、消費税率は現行の5%から20%になる。

 この改革によって、経済には民間活力が呼び込まれるとみている。マクロモデルの試算によると、年金保険料の廃止や法人税率の引下げにより、企業は設備投資や採用・賃上げを積極化することから、GDP(国内総生産)が大きく高まり、失業率は2010年代後半に3%を切るところまで低下する。と同時に、消費者物価上昇率も2%程度で安定的に推移するようになり、物価も押し上げられるなどデフレから脱却する。

 また、保険料撤廃や法人税減税による歳入減で財政収支は一時的に赤字が拡大するが、消費税率の段階的な引上げにより、国・地方の基礎的財政収支は、2027年度にはほぼ中立に戻る。すでに払い込んだ保険料に対応する将来給付肩代わり分を除けば、同収支は最終的に改革がなかった場合よりも改善する。この結果、現在の若年層、さらには今後生まれてくる将来世代ほど負担が重いという世代間格差が緩和される、という提言だ。

 同提言の全文は↓
 http://www.jcer.or.jp/policy/pdf/pe(iwata20110517).pdf

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