2011年05月12日-3
ベンチャー投資拡大にエンジェル税制の改革を

 世界的な金融危機を背景にわが国のベンチャー投資はここ数年にわたり低迷した。今後、景気回復とともに投資の増加が期待されるが、元々少ないわが国のベンチャー投資をどのように支援していくかという課題が残っている。みずほ総合研究所は、ベンチャー政策のうち税制優遇措置(エンジェル税制)を取り上げ、最新の情報を用いてわが国のエンジェル税制の評価を試みている。

 エンジェル税制は、(1)ベンチャー投資に対する所得控除又は税額控除、(2)ベンチャー投資から生じたキャピタル・ゲインの減免、(3)ベンチャー投資から生じた損失(キャピタル・ロス)の通常所得との通算に分けられる。ベンチャー投資を行った時点の優遇措置は「投資額-2000円」の所得控除の適用。これは、直接投資以外にファンド経由でも適用できる。対象企業は設立3年未満で、ベンチャー投資に対する所得控除の上限は1000万円。

 キャピタル・ゲインに対しては、投資額をその年の株式売却時点まで繰り延べることができる。投資額の上限はなく、ベンチャー企業要件も設立10年未満と長い。しかし、この措置は投資に対する所得控除との選択制。キャピタル・ロスに対しては、キャピタル・ゲインと相殺できるのみで、通常所得との通算はできない。この点が、長らくベンチャー投資が伸び悩む要因となっている。

 そこで、将来の方向性として、エンジェル税制は法人向けの措置を新たに導入するのではなく、個人向けの措置の拡充が必要で、ベンチャー投資に伴うキャピタル・ゲインに対する課税軽減が、わが国に欠けている政策であると指摘。特に、キャピタル・ロスの通常所得との通算がインセンティブの拡大につながるが、最終的にはエンジェル税制をどれだけ重要視するかという国の政策判断にかかっている、としている。

 同レポートの全文は↓
 http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/research/r110501tax.pdf

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