2011年04月20日-2
経営承継円滑化法の民法特例適用は低水準

 事業承継税制の抜本拡充や民法上の遺留分制度による制約への対応を始めとする事業承継円滑化のための総合的支援策となる「経営承継円滑化法」が2008年5月に成立、同年10月1日から施行(民法の特例に関する規定は2009年3月1日施行)されたが、中小企業庁のまとめによると、2011年2月28日時点での認定実績は、相続税280件、贈与税88件、金融支援40件、また民法特例の確認は26件(除外合意のみ)であることが分かった。

 制度創設以来2年半を過ぎているのに、この実績はあまりにも少なく、制度の煩雑さと「相続=争続」といわれるところに、その原因が潜んでいるとの見方が多い。例えば、民法の特例で、一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者全員との合意及び所要の手続き(経済産業相の確認、家庭裁判所の許可)を経ることを前提に、その特例を受けることができるわけだが、そのハードルは低くない。

 「除外合意」は、先代経営者の生前に、経産相の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容を家庭裁判所の許可を受けることで、先代経営者から後継者へ贈与された自社株式その他一定の財産について、遺留分算定の基礎財産から除外できる。これにより、事業継続に不可欠な自社株式等に係る遺留分減殺請求を未然に防止できるとされる。事業後継者単独で家裁に申立てることができるが、その前段の合意が難しい。

 「固定合意」は、生前贈与後に株式価値が後継者の貢献で上昇した場合に、遺留分算定に際し相続開始時点の評価で計算されることを避けるため、経産相の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容を家庭裁判所の許可を受けることで、生前贈与株式の価額を合意時の評価額で予め固定できる。しかし、景気低迷下で株価が上昇するはずもなく、いまだ確認は「0」と、事業承継税制の実態と現実の乖離が浮き彫りになっている。

ウィンドウを閉じる