2011年03月16日-1
求められる若年層のすねかじり~ニッセイ基礎研

 「いつまでも親のすねをかじってはいられない」というのが世の常識。しかし、若年層がこの意識を持ち行動することが経済全体にマイナスの影響を与えるおそれがあり、その際、父母ではなく70歳以上の高齢者(祖父、祖母)から孫への資産移転を積極的に進めるべき、というユニークなレポートをニッセイ基礎研究所が掲載した。タイトルは「求められる若年層のすねかじり」。

 それによると、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」で、70歳以上の高齢層は世帯平均1700万円もの金融資産を保有。総務省の推計人口による70歳以上の平均年齢が78歳で、厚労省の簡易生命表では78歳の平均余命が男性10歳、女性13歳で、78歳の高齢者が毎年100万円を取り崩し90歳まで生きた場合でも500万円余る。つまり、今後はこの高齢層の資産を若年層に回す仕組みを構築することが必要、という。

 政府は、2009年には2年間の期限を設け、直系尊属(実父母、実祖父母)から受けた500万円までの住宅取得資金の贈与を非課税とし、2010年度改正では、1500万円(2011年は1000万円)に引き上げた。また、2011年度改正では相続時精算課税制度(非課税枠2500万円)において、従来推定相続人(直系卑属のうち、最も先順位の相続権のある人)に限定されていた受贈者の範囲に20歳以上の孫を追加している。

 「ここは思い切って相続税の更なる強化に加え、35歳未満への贈与を非課税としてみては?」と提言。そうすれば、相続税の対象となることが懸念される高齢層は確実に孫への贈与を進めるだろう。若年層での格差拡大、税収減少といった懸念はあるが、何よりも優先すべきは若年層の消費を拡大させ経済全体のパイを広げることで、経済全体のためにも若年層は親ではなく祖父母のすねをかじることが求められる、としている。

 同レポートの全文は↓
 http://www.nli-research.co.jp/report/researchers_eye/2010/eye110309.html

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