2011年03月07日-3
利用者増えるのか注目される特定支出控除の見直し

 2011年度税制改正では、給与所得1500万円を超える場合の給与所得控除に上限を設ける一方、サラリーマンの必要経費と称される「特定支出控除」を使いやすくする観点から見直しが行われる。1988年に創設された特定支出控除は、給与所得者が給与所得控除額を超える特定支出をした場合に、その超える金額を給与所得から差し引ける制度だが、実際の利用者は、2005年分や2003分で二ケタ台となったものの例年一ケタ台にとどまる。

 給与所得者の特定支出に該当する項目は、(1)「通勤費」、(2)転勤に伴う「転居費」、(3)職務の遂行に直接必要な技術や知識を習得するための「研修費」や(4)同「資格取得費」、(5)単身赴任などに伴う「帰宅旅費」の5項目に限られ、適用を受けるためには、給与所得の源泉徴収票以外に、特定支出に関する明細書や給与の支払者の証明書を申告書に添付する必要があるなど、手間がかかることが、利用者が少ない要因だった。

 2011年度改正における具体的な見直しは、特定支出の範囲の拡大及び特定支出控除の適用判定・計算方法の見直しの2点。特定支出の範囲の拡大では、職務の遂行に直接必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費や、職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服の衣服費、職務に通常必要な交際費及び職業上の団体の経費(勤務必要経費)も控除の対象に追加する。

 ただし、その年中に支出した勤務必要経費の金額の合計額が65万円を超える場合は65万円が限度となる。一方、現行の特定支出控除では、その年中の特定支出の額の合計額が給与所得控除額を超えるときは、確定申告によりその超える金額を給与所得控除後の金額から差し引くことができるが、見直し後は、その年の特定支出の額が、一定額を超える場合は、その超える部分の金額を給与所得控除に加算することができる。

 具体的には、(1)その年中の給与等の収入金額が1500万円以下の場合は、その年中の給与所得控除額の2分の1に相当する金額を、(2)その年中の給与等の収入金額が1500万円を超える場合は、125万円を、それぞれ給与所得控除額に加算できる、といった特定支出控除の適用判定・計算方法が見直される。2011年度税制改正が実現すれば、2012年分以降の所得税について適用されるが、はたして利用者は増えるのか注目されるところだ。

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