2011年03月02日-2
相続税・贈与税見直しの資産移転への効果は?

 2011年度税制改正では、法人税の実効税率5%引下げ、所得課税における給与所得控除の見直しなどが大きな焦点だが、同時に相続税、贈与税についても大幅な見直しが行われる。ニッセイ基礎研究所はこのほど、「相続税・贈与税の見直しは若年世代への資産移転を加速させるか?」と題するコラムを発表し、「高齢層が抱える老後生活に対する不安を和らげる社会的仕組みも合わせて構築する必要があろう」と提言している。

 具体的な改正案は、相続税では、基礎控除額が現行の「定額部分5000万円に1000万円に法定相続人数を乗じた額を加えたもの」から、「定額部分3000万円に600万円に法定相続人数を乗じた額を加えたもの」へと縮小され、課税ベースが拡大されることになる。さらに最高税率についても、現行3億円超の部分に50%となっているものから、6億円超の部分に55%へと引き上げられることとなる。

 我が国の家計の金融資産は、総額1500兆円のうち約6割の900兆円を60歳以上の高齢層が保有している。高齢層は消費が少ないため多額の金融資産が眠っており、加えて長寿化の進展で相続発生時に財産を引き継ぐ子ども自体が高齢となるケースが増加、相続時精算課税制度の受贈者の範囲に孫を加えることなどで、親から子という従来の流れに加え、祖父母から孫への住宅取得資金の提供などの新しい動きが加わることが期待される。

 しかし、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」では、60歳以上の7割以上が「十分な金融資産がない、年金や保険が十分ではない」と老後の生活に不安を覚えており、今後、若年層への資産移転加速のためには、老後生活への不安を和らげる社会的仕組みも合わせて構築する必要がある。民間金融機関が販売している終身年金への加入を促進させる思い切った税制優遇措置を設けることも検討に値する、と結んでいる。

 同レポートの全文は↓
 http://www.nli-research.co.jp/report/report/2011/03/repo1103-T.pdf

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