2011年02月07日-1
高額資産保有者の相続税実効税率は高くない

 2011年度税制改正では資産課税に関する改正が行われ、高額の遺産相続に対する課税が強化される。そこで、関西社会経済研究所では、今回の税制改正の効果を検討するため、「資産課税についての調査:18歳以上の子どもがいる世帯主1000人アンケート」を実施した。それによると、所得階層上位(1250万円以上)8%が資産の24%を保有しており、資産全体の半分は資産家上位10%に保有されて、資産保有は偏っていることが分かった。

 資産保有額(土地+金融資産-負債)別相続割合をみると、3~9億円という高額資産を保有する世帯は11世帯存在するが、うち5世帯は、その資産の80%以上が相続だった。また、高所得階層(1500万円以上)は全体の4.4%に過ぎないが、うち相続あり世帯が31.8%を占め、その平均相続資産額は1億7795万円、資産形成に占める相続資産の比率も49.9%とほぼ5割を占めて大きくなっている。

 相続資産階級別の相続税実効税率(相続税負担額/相続資産額)をみると、相続資産「7億~11億円」(3世帯)が3.7%、「2億~5億円」(5世帯)が4.3%、「1億~2億円未満」(8世帯)が2.9%、「5000万~1億円未満」(25世帯)が1.4%と、高額の資産保有者の相続税実効税率も高くない。また、高い所得階層において定期預金を通じた生前贈与(節税)を行っている傾向があり、贈与による格差拡大が懸念される。

 例えば、「1250万~1500万円」の所得階層で52.5%が「毎年と数年おき」に定期預金を行っているのに対し、「300万~400万円」ではこの値は25.6%と半減している。一方、所得階級別教育投資額の分布をみると、所得階層が高い家庭ほど子どもに対する高額な教育投資が行われ、1ヵ月10万円以上の教育投資となると、この傾向はさらに顕著だ。結果として、所得階層が高い家庭ほど、レベルの高い大学に子どもを進学させている。

 関西社会経済研究所では、「今回の相続税改正は再配分という方向性としては評価できるが、最高税率の引上げは金銭的に効果が小さく、土地を優遇する制度に改めるのが効果的」とした上で、調査結果を踏まえ、「親の資産による教育格差が存在する現状を踏まえ、これ以上の教育格差拡大を防ぐため、子ども手当は必ず教育費に充当されるような支給方法(教育バウチャー)が望ましい」と提言している。

 同調査結果の詳細は↓
 http://www.kiser.or.jp/ja/project/pdf/__Pdf01.pdf

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