2011年01月31日-1
新築住宅の固定資産税の特例廃止に異論

 2011年度税制改正論議のなかで、新築住宅の固定資産税の特例廃止が浮上し、大綱で検討事項とされたが、ニッセイ基礎研究所は「住宅・土地税制の決め方をご存知ですか?」と題したレポートで、住民不在と増税ありきの姿勢に警鐘を鳴らしている。新築住宅の固定資産税を2分の1に軽減する特例措置は、1950年の創設(1964年に法制化)以来、幾度も延長され60年間にわたり存続してきたもの。

 総務省は、同制度の住宅建設促進効果はすでに失われたとし、税制調査会に廃止に向けた検討を促した。同省は、2009年10月調査で新築特例を受ける予定の納税者の54%が特例の存在を知らず、92%は住宅を新築(購入)するきっかけにはならなかったと回答したというのだ。一方、国土交通省は、すでに特例ではなく本則として国民に認識されている、として継続を要望しており、総務省の動きは、明らかに政策の矛盾と指摘している。

 新築特例は家屋だけに対するものだが、現在、平均的な住宅用地(200平方メートル以下の小規模住宅用地)に対する固定資産税評価額も特例により6分の1に大きく軽減されている。税制調査会の資料をみると、総務省は、新築住宅のみならず、住宅用地の特例の見直しも視野に入れているようだ。この特例による税費用は1999年以来3兆円を超える水準で推移しており、仮に廃止・縮小された場合の納税者の負担は甚大、としている。

 2011年度税制改正大綱では、地域主権改革を進める観点から住民自治を支える根幹として地方税制の充実が重要と、自主的な判断と執行責任の拡大という方向で抜本的に改革し、成案を得たものから速やかに実施するとした。この背後には、各地方団体に固定資産税などの増税を促す意図が見え隠れしており、地域主権改革や住民自治に向けた改革が提示されたが、住民不在の議論とまず増税ありきでは、その前途は危うい、と主張している。

 同レポートの全文は↓
 http://www.nli-research.co.jp/report/report/2011/02/repo1102-T.pdf

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