2011年01月17日-2
管財人には破産会社の退職金の源泉徴収義務なし

 最高裁第2小法廷(吉田祐紀裁判長)は14日、破産した会社の元従業員に支払われる退職金の所得税を巡り、破産管財人が源泉徴収する義務があるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、徴収義務はないとする初判断を示した。管財人は、破産会社の財産処分の一環として、破産債権である元従業員らの退職金に対する配当をするが、これまで源泉徴収の明確な規定はなかった。

 この事件は、管財人が破産会社の元従業員ら270名の退職金債権に対し、合計5億9415万円余の配当をしたが、その所得税の源泉徴収はしなかったところ、所轄税務署から配当に係る源泉所得税2013万円余及び不納付加算税201万円余の賦課決定をしてきたため、提訴したもの。一審の大阪地裁、二審の大阪高裁ともに、「破産管財人は、その配当に付随する職務上の義務として、所得税の源泉徴収義務がある」との判断を示していた。

 第2小法廷は、「所得税法の規定が、退職手当等の支払者に源泉徴収義務を課しているのは、支払者と受取者が密接な関係にあって、徴税上特別な便宜を有し、能率を挙げ得る点を考慮したもの」とした上で、「破産管財人と労働者との間に特に密接な関係があるということはできない」と指摘。「管財人が退職金債権に対する配当の際に所得税を徴収して国に納付する義務はない」との判断を示し、一、二審判決を破棄した。

 これまで、実務では徴収は不要とされてきたが、一、二審判決は徴収義務を認め、国税当局もこれに沿った指導をしてきたため、各地の破産手続きに混乱が生じていた。徴収義務を認めると、管財人の事務負担が増し、経費がかさんで債権者に対する配当も減ることから、弁護士らの間では一、二審判決に対する批判が強かったという。管財人が源泉徴収しなければ、元従業員は自分で申告して納税することになる。

 最高裁判決の全文は↓
 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110114143526.pdf

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