2010年12月23日-2
控除廃止は公平か~第一経済研が11年度大綱を検証

 第一生命経済研究所はこのほど、「控除廃止は公平なのか?」と題して、新しい税制改正大綱を検証するレポートを発表した。同レポートは、「所得が増えた人を対象に課税強化することは、経済成長に寄与しにくい。本来、応能課税を強化する必要性は、中国のように経済発展で不平等が発生している世界を対象とするのであって、日本のように経済が地盤沈下している世界とは異なる」との厳しい評価を下している。

 税制改正大綱は、給与所得控除の見直し、成年扶養控除の上限設定、退職金課税の見直し、相続税の控除見直しなど、高所得の給与所得者などを念頭に置いた課税強化が目立つが、高所得者に課税強化して、低所得層への公的扶助を手厚くすることは積極的に行われても仕方がない。再分配策とは、あくまで経済成長の副作用を均すという意味合いだ。日本のように経済が低迷している国では、景気悪化の作用をなくすことが先決、という。

 「控除から手当てへ」という切り替えは、民主党の方針だったが、扶養控除をここまで縮減するという青写真は、明確に予定されていなかったのではあるまいか。また、2008年の衆院選前には、子ども手当や高校無償化の財源は、無駄を省いて捻出すると説明され、無駄が省けると思っていた人には、子ども手当の財源が、よもや給与所得控除などの大胆な見直しによって捻出されるということは想像していなかった、と指摘する。

 歳入確保が頓挫したのに、子ども手当などの歳出計画は実行されることになったから、収支の辻褄を合せようと予想外の控除廃止が俎上に乗ったと理解することもできるとし、その措置によって、結果的に年収階層によってネット収支でみた子ども手当の実入りは大きく変化し、子どものいる高所得層では、子ども手当があっても、扶養控除廃止が行われることで、むしろ負担増を強いられることになったと、している。

 同レポートの全文は↓
 http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/kuma_index.html

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