国税庁が16日に発表した2009事務年度における相続税調査事績によると、今年6月までの1年間に2007年分及び2008年分の申告事案を中心に1万3863件の調査を実施し、うち84.7%にあたる1万1748件から総額3995億円の申告漏れ課税価格を把握した。前年度に比べ、調査件数は1.8%減、申告漏れ件数は2.2%減、申告漏れ課税価格は2.5%減少し、1件あたりの申告漏れ課税価格では0.3%減の3400万円だった。
加算税124億円を含めた追徴税額は856億円(対前年度比8.0%減)で、申告漏れ1件あたりでは729万円(同6.0%減)となる。仮装・隠ぺいなど意図的な不正を行ったとして重加算税を賦課された件数は、申告漏れ件数の16.8%にあたる1970件(同4.0%減)で、その不正申告漏れ課税価格は698億円(同10.6%減)にのぼった。申告漏れのあった相続財産の金額の内訳は、「現金・預貯金等」が1319億円で32.8%を占め最多。
一方、資産運用の国際化に対応し、被相続人や相続人の居住形態等から海外資産の相続が想定される事案等については、深度ある積極的な調査を行っている。同事務年度は531件(対前事務年度比11.8%増)の調査を実施した結果、426件(同13.0%増)から319億円(同9.7%減)の申告漏れ課税価格を把握した。1件当たりの申告漏れは7477万円(同20.1%減)と、全体の申告漏れ課税価格の平均3400万円の2.2倍にのぼる。
また、資料情報等から申告納税義務があるにもかかわらず無申告と想定される事案に係る調査は、626件(対前事務年度比12.8%増)に対して行われ、このうち申告漏れ等があった件数は調査全体の84.3%にあたる528件(同13.1%増)で、その申告漏れ課税価格は757億円(同14.5%増)にのぼった。追徴税額は加算税8億円を含む49億円(同0.5%減)。1件あたりの申告漏れ課税価格は1億4332万円(同1.3%増)だった。
調査事例をみると、資料情報から、被相続人A(不動産賃貸業)に係る相続税の申告が必要と思われたが、無申告だったことから、調査した結果、相続人Bは、Aの死亡後から相続税の申告期限までの間に、A名義の預金口座の一部を相続人Cの名義に変更していたほか、調査着手後にも、他の一部のA名義の預金口座をCの名義に変更していたことが判明した。4億4500万円の申告漏れに対し、重加算税を含め1億6200万円が追徴されている。