2010年12月09日-1
満期養老の一時所得控除は給与所得課税分に限定

 2011年度税制改正において、一時所得計算上控除する保険料の明確化が図られる。これは、税制調査会の審議において、関係機関から要望されていない項目だが、適正な課税を推進するために必要な項目として財務省が提出したもののひとつで、実現性が高い。具体的には、満期養老保険の計算上、その支払いを受けた金額から控除できる事業主が負担した保険料は、給与所得課税が行われたものに限る旨を法令上明確化する。

 養老保険は、法人契約で役員を被保険者とし、会社と役員が2分の1ずつ保険料を負担するもので、満期保険金は役員、死亡保険金は会社に支払われる。保険料の支払時での取扱いは、法人が負担した2分の1が損金算入でき給与課税も行われない。満期保険金を受領した場合には役員の一時所得とされるが、その計算において、現行制度では、その受領金額から、その保険契約に係る保険料の総額を控除することとされているのだ。

 今回の控除できる保険料の明確化の背景には、こうした養老保険を利用して、関係法人から役員に資金を移転する租税回避が行われているとの税務当局の判断がある。控除されるべき保険料は、満期保険金を取得した者本人が負担したものに限られるべきとの考えだが、法令上、それ以外の者が負担していたものも含まれるのか明らかではなかったので、控除できる保険料は、受領者本人が負担したものに限る旨を明確化するわけだ。

 ところで、控除できる支払保険料をめぐっては、昨年7月の福岡高裁判決で、保険料の支払総額を一時所得から控除できるとの判示がある。高裁は、法令上、生保契約に基づく一時金が一時所得となる場合、保険料等の総額を控除できると規定され、所得者以外の者が負担した保険料も控除できるとの通達から、他の解釈を容れる余地はないとの考えを示したのだが、こうした見解を押し切って法令上整理してしまおうというのだ。

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