2010年12月06日-3
「95%ルール」の見直しと免税事業者の要件の厳格化

 2011年度税制改正に向けて、消費税の課税の適正化の観点から、仕入税額控除制度におけるいわゆる「95%ルール」の見直しと免税事業者の要件の厳格化が検討されている。「95%ルール」については、対象者を中小企業者に限定し、免税事業者の要件については、課税売上高が1千万円を超えることが期の途中で明らかになった場合には、翌期から課税事業者となるように、要件を厳格化する。

 現行の消費税法では、非課税売上分に対応する仕入れについては、仕入税額控除を認めないのが原則だが、売上のほとんど(95%以上)が課税売上の場合には、全ての仕入れについて仕入税額控除を認めている(いわゆる「95%ルール」)。これは、消費税導入当初に中小事業者の事務負担に配慮する観点から設けられた特例措置のひとつだが、以前から益税の最たるものとの指摘があり、特に大企業がその恩恵を受けているとの批判があった。

 そこで、事業者の事務負担に配慮する観点から講じられている制度の趣旨に鑑み、95%ルールの対象者から大企業を排除し、中小企業者に限定する。将来、消費税率の大幅な引上げが不可避となるなかで、益税の最たるものとの指摘がある95%ルールを現行のまま放置しておくことは、消費税制度の信頼性を損ねることになるとの考え及び消費税の課税の適正化の観点から見直されるものだ。

 また、現行の事業者免税制度については、前々年(個人)または前々事業年度(法人)の課税売上高が1千万円以下の事業者についてはその課税期間の課税資産の譲渡等について、消費税を納める義務が免除されている。この制度も、小規模な事業者の事務負担や税務執行コストの配慮から設けられている特例措置だが、制度を悪用した法人の新設等による課税逃れを抑制する観点から、要件を厳格化するものだ。

 現行制度では、当期の扱いは前々期の課税売上高のみで判定することから、前期に売上が急増しても、課税事業者となるのは翌期からとなる。こうした点を悪用した消費税の脱税事例が見受けられることから、課税売上高が1千万円を超えることが期の途中で明らかになった場合には、その翌期から課税事業者となるよう要件を厳格化する方向で見直されることが明らかになっている。

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