2010年11月01日-1
海外取引調査で1件平均1698万円の申告漏れ把握

 経済社会の国際化に伴い、国際的な課税問題は企業のみならず個人の富裕層にも広がりを見せている。国税庁は、今年6月までの1年間(2009事務年度)に海外取引を行っている者を対象に前年度比5.1%減の3663件の実地調査を実施し、2.0%増の総額約622億円、7.5%増の1件平均1698万円の申告漏れ所得を把握した。この金額は、実地調査(特別・一般調査)全体での1件平均879万円の約1.9倍にのぼる。

 海外取引調査3663件を取引区分別にみると、「海外投資」(預貯金等の蓄財を含む海外の不動産や証券などに対する投資)が全体の35%を占める1264件、「輸出入」(事業での売上や原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引)が同15%の551件、「役務提供」(工事請負やプログラム設計など海外において行う、労力・技術等の第三者に対するサービスの提供)が同10%の380件となっている。

 そのほか、海外で支払いを受ける給与や贈与(親族に対する海外送金等)など海外取引に係るもので上記の取引に該当しない「その他」が全体の40%を占める1468件だった。これらの海外取引調査の結果、1件あたりの申告漏れ所得が1698万円見つかったわけだが、取引区分別では、「海外投資」で1528万円、「輸出入」で1135万円、「役務提供」で2025万円、「その他」で1971万円が、それぞれ把握された。

 調査事例をみると、居住者である会社役員Aは、海外親会社の役員でもあり、ストックオプションなどのインセンティブ報酬を海外親会社から受領していたにもかかわらず、取得した株式は海外の証券会社に保管しておけば、日本の税務当局に把握されないと考え、この株式から生じた配当も含めて1億1600万円を申告書から除外し、6200万円の税額が追徴されたケースが報告されている。

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