2010年10月25日-1
15%の実地調査で所得税申告漏れの約7割を把握

 近年の所得税調査の特徴は、高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査(特別調査・一般調査)を重点的・集中的に行い、一方で実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による“簡易な接触”で済ます調査方針にある。2009事務年度の調査でも、調査件数では約15%の実地調査で、申告漏れ所得金額全体の約7割(67.5%)を把握しており、近年は実地調査を中心とした効率的な所得税調査が続いている。

 国税庁が21日に公表した2009事務年度の個人事業者に対する所得税調査状況によると、今年6月までの1年間の所得税調査は、前年度に比べ8.1%減の67万4千件に対して行われ、うち62.2%にあたる41万9千件から同5.3%減の8670億円の申告漏れ所得を見つけた。追徴税額は同3.5%減の1174億円だった。1件あたりの平均では129万円の申告漏れに対し17万円を追徴している。

 実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前年度比6.4%減の5万6千件だったが、うち87.0%にあたる4万9千件から同7.3%減の総額4959億円の申告漏れ所得を見つけ、同4.1%減の964億円を追徴。件数では全体の8.4%に過ぎないが、申告漏れ所得金額全体の6割近くを占めた。調査1件あたりの申告漏れは、879万円と、全体の平均129万円を大きく上回る。

 また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、調査件数全体の6.8%の4万6千件行われ、うち67.6%の3万1千件から894億円の申告漏れを見つけ、56億円を追徴した。1件あたり平均申告漏れは196万円。一方、簡易な接触は、57万1千件行われ、うち59.4%の33万9千件から2817億円の申告漏れを見つけ154億円を追徴。1件あたりの平均申告漏れは49万円だった。

 このように、実地調査では、全体の約15%の調査件数で申告漏れ全体の約7割を把握しており、高額・悪質な事案を優先して深度ある調査を的確に実施する一方、短期間で申告漏れ所得等の把握を行う効率的・効果的な所得税調査が実施されている。なお、業種別1件あたりの申告漏れ所得高額業種は、「キャバレー」(2545万円)がトップ、「風俗業」(2264万円)、「くず金卸売業」(1926万円)がワースト3。

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