2010年10月06日-1
「年金を相続させていいのか」でユニークな提言

 賦課方式の公的年金は給付財源を現役世代の保険料で賄っている。保険料を拠出して親世代を扶養したことにより、子供の世代から扶養してもらうことができる。そこで、ニッセイ基礎研究所がこのほど発表した「年金ストラテジー」では、年金受給者が死去した場合に、それまでに受給した年金に対し、世代間連帯相続税として徴収し、年金会計に返還する制度の創設を提言している。

 親を扶養した子供が、親が残した財産を相続するのは当然だが、「年金財源である保険料を他人の子(社会)が負担している場合は、自分の子ではなく、他人の子(社会)つまり年金制度に返すか相続させるという考えも成り立ちうる」という。そこで、受給者が(夫婦の二人ともが)死去した際にある程度の遺産があれば、それまで受給した年金額の何割かを、世代間の連帯相続税として徴収し、年金会計に返還するという仕組みだ。

 その根拠はこうである。年金がミーンズテスト(資産調査)なしに支給されるのは、救貧ではなく防貧を目的としているからである。そこで、「年金額以上の財産が残った場合は、年金なしで暮らせた、つまり防貧のニーズがなかったことになる」というのが課税の根拠となるという考え方だ。しかし、年金受給者の中には、まぎれもなく救貧のニーズもある。そのへんの線引きが難しい。

 現在、年間死亡者数は100万を超えている。もしもこの相続税収が一件平均100万円ならその税収は1兆円、500万円なら5兆円に上る。受給した年金を子供に相続させる代わりに、連帯相続税を通じて年金会計に返還し、少しでも将来世代の負担を軽減するという選択肢は乱暴な発想だろうか。2011年度の税制改正のテーマとして、相続税の諸控除の引上げが俎上の乗っているが、この提言はどう受け止められるだろうか。

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