2010年09月21日-1
雑損控除の対象にならないペイオフによる損失

 日本振興銀行の破綻を受け、同行の金融整理管財人を務める預金保険機構は1971年の制度創設後初となるペイオフを実施した。ペイオフにより保護されるのは、当座預金など決済用預金の場合は全額だが、普通預金や定期預金などの場合は元本1千万円とその利息まで。これを超える部分の預金は保護の対象外。破たんした金融機関の財産状況に応じて弁済される規定にはなっているが、全額戻ることは考えられない。

 預金保険機構によると、名寄せの結果(速報値)、振興銀が破綻した10日時点の預金者は計12万6779人で、預金の元本が1千万円以内の人は全体の97.3%を占めた。一方、元本1千万円超の預金者は3423人、元本1千万円超の部分だけを合計すると約110億円という。現時点で振興銀が1800億円超の債務超過に陥っていることを考えれば、預金など一般債権は大幅にカットされるとみられ、1千万円超の大部分は戻ってこないだろう。

 では、こうしたペイオフで保護されない1千万円超の部分に係る損失は、税務上何らかの救済措置があるのだろうか。結論を言えば、法人の場合は損金になるが、個人の場合は控除されない。雑損控除の適用が考えられるが、同控除は、事業用資産や山林、生活に通常必要でない資産について受けた損失は対象とならないし、詐欺や脅迫による損失も対象とはならないとされている。

 現行では、地震や風水害などの自然災害、火災・火薬類の爆発など人為的災害や、盗難、横領の場合などが雑損控除の対象とされ、詐欺や恐喝による損害と同様、ペイオフは適用対象外となる。預金した責任は預金者にあるとの「自己責任」の考え方が対象外とする理由のようだ。日本税理士会連合会ではかつて、ペイオフによる損失も雑損控除の対象に加えるべきとの要望を税制改正建議書に載せたこともあったが、実現しなかった。

ウィンドウを閉じる