2010年09月16日-1
子ども手当満額支給・3控除等廃止の影響を推計

 民主党が昨年8月の衆院選挙のマニフェストにおいて子ども手当の創設、高校の授業料の実質無料化を掲げた。子ども手当は1人月額2万6千円とされ、中学卒業まで所得制限なしで支給される計画とされた(2010年度は半額)。一方で、児童手当を廃止し、所得税における扶養控除・配偶者控除・配偶者特別控除の3控除も廃止する。ただし、老年者控除(50万円)を復活させ、公的年金等控除の最低額を20万円引き上げる方針だ。

 内閣府の経済社会総合研究所は13日、子ども手当等が所得に与える影響について推計結果を発表した。それによると、子ども手当を新設し配偶者控除等を廃止する民主党案を実施すると、全国5000万強の世帯のうち38%(1900万世帯強)が所得純増となる。所得純増額は年額平均23万円。ただし、所得増減なしの世帯が43%(2200万世帯弱)と意外に多く、負担が純増する世帯が19%(約940万世帯、純増年額平均4万円)あるという。

 高校卒業前の子どもがいる世帯はほぼ間違いなく純増となる。また、年収800万円以上で所得が純増する世帯が全体の1割弱の約490万世帯もある。子ども手当等に児童手当なみの所得制限を課すと、年間で7800億円強(約19%)の財源を圧縮することができると同時に、年収800万円以上で所得が純増する世帯を約220万世帯(世帯総数の4%強)に減らすことが可能となると推計している。

 子ども手当等の実施の課題は財源である。子ども手当完全実施が5兆4760億円、高校授業料無料化が6830億円、老年者控除等の所得税減税額が2990億円の合計6兆4580億円が必要財源で、児童手当の廃止(9480億円)や扶養控除等3控除の廃止(1兆5690億円)でも賄えず、年間約4兆円の財源不足が生じる。それを仮に国債発行で賄おうとすれば、それは負担を最終的に子どもに押し付けることを意味する。

 他方、子ども手当は扶養者への現金給付のため、子ども自身のために必ずしも使用されない怖れがある。それを回避するための手段の一つに「子育てバウチャー」がある。妊婦健診代・子どもの医療費・ミルク代・保育料・給食費・教材費・修学旅行費・受験料などに使途を限定した金券だ。しかし、このバウチャーも金券ショップなどで換金されてしまう怖れがないとはいえないと指摘。子ども手当等の実施には多くの課題があるようだ。

 同推計結果の詳細は↓
 http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis250/e_dis245.pdf

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